海外アーティストに対する
旅費実費支払いは源泉徴収義務あり

こんにちは!税理士法人YFPクレア 芸能チームです。

少し前ですが、国税不服審判所にて
「海外アーティスト(非居住者)に対する渡航費等は源泉徴収義務あり」
という審判が下されまして「えっ……?!」と度肝を抜かれましたので、そのことをお話いたします。

審判内容の簡単な抜粋

審査請求人について

  • コンサート企画等を行う法人(以下、企画法人)
  • 公演のために海外の音楽家を日本に招くに際して、その音楽家が”立替払い”をした航空会 社等の請求書の金額も含まれた当該音楽家発行の請求書(航空会社等の請求額は請求書内 で別記されている)を受け取った。
  • 企画法人は記載された金額を指定先の海外口座へ送金した。

原処分庁の主張

企画法人が払った金額のうちの旅費等の支払額について、以下の理由により「人的役務の提供に係る対価」に該当するため、「国内源泉所得」に該当し源泉徴収の義務がある。

  • 日本公演時の契約の中には航空券代の支払いに関する契約も含めて締結しているため、航空券代等も含めて全額が「人的役務の提供に係る対価」と判断
  • 航空券代等は航空会社等に直接支払われたものではないから、「人的役務の提供に係る対価」に該当すると判断

審判所の判断

 人的役務の提供の対価に含まないものとすることができる場合は以下のとおり。

  • 企画法人から航空会社やホテル等に直接支払われた場合
  • その金額が妥当と認められるものである場合

上記以外の場合は、人的役務の提供に係る対価に該当し源泉徴収の義務あり

まとめ

審判の内容については簡単に抜粋するとこんな感じだったわけですが……
この判断、芸能関係の税務に携わる者として<<とーーーーーーーっても重要>>です!

旅費やホテル代など、実費請求的なものは「立替払い」であって報酬とは違うという認識があるので源泉徴収対象からはずしがちです。
しかし、不服審判所にて上記のとおりの判断があった以上、気をつけなければなりません。
海外アーティストの渡航費や日本でのホテル代などを源泉徴収税対象にしたくない場合は、日本の企画法人が航空会社やホテルへ直接払うようにすることなど、注意と工夫が必要です!

源泉税徴収対象となった場合、非居住者に対する源泉税率は20.42%となり、通常の税率(10.21%)とは異なります。
相手が海外居住者なのに徴収し忘れてしまった日には「イベントが終わったあとに海外まで追いかけて徴収する」なんてことになりかねず、とても大変なことになります。

まずは日本の税金制度について先方に説明し、納得いただいた上で該当金額を海外送金していただく……ということになりそうですが、それも外国語でしなくてはならないなんて、考えただけでも目が回りそうです!

とにもかくにも、海外からのアーティストとの契約の際には、源泉税の落とし穴にハマらないことが重要です。
いっそのこと審判所の判断にしたがって、旅費等を含めて「人的役務の報酬」と認識した上で請求額を支払うという方法のほうが、スッキリするかもしれません。
その場合、対象国によっては租税条約等で日本での源泉税が一部(全部)免税になるなど、徴収を減額、または回避する手段はあります。

我が国の租税条約等の一覧

租税条約の申請は 事前に 申請書を税務署に提出する必要がありますので、前もっての手続きが必須です。

租税条約に関する届出書

コロナ禍での渡航制限も収まり、海外の華やかなアーティストが続々と来日する日もそう遠くはないはず!

非居住者に対する源泉税、気をつけましょう!

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