こんにちは。税理士法人YFPクレア、社会福祉法人チームです。
先日、友人と飲みに行った際、保育園の話から保育園の税金の話になり、ちょっと話したところ
非課税なら、税理士いらないんじゃないの?
という質問がありました。
なるほど…確かに一般的に言えば、「税理士は税金を計算する人」だと思ってる方が多いでしょうからそう思っても仕方ないかもしれません。
きっと社会福祉法人を経営しようと思っている方は税理士の必要性をすでにご存知のかたもいるかも知れませんが、ここでは社会福祉法人に税理士が必要なのか、また、社会福祉法人の特殊性と税理士の選び方についてお話したいと思います。
社会福祉法人とは
社会福祉法人とは『社会福祉法』という法律に基づき設立された法人で、その目的は社会福祉事業を実施することにあります。
社会福祉事業とは社会福祉法第2条において第一種・第二種福祉事業として限定列挙された事業であり、例を挙げると特別養護老人ホーム、保育園、デイサービスセンターなどがありますが、主には公共性の強い、社会的弱者の生活を支えることを目的とした事業といえます。
そういった地域の福祉サービスにこたえるための事業であることから、営利を求める一般事業会社とは事業目的や会計目的に多くの違いが生まれることになります。
【一般事業会社】… 営利法人として株主や債権者の利益を追求し、会計開示は利益やその利益の源泉を開示することを目的。株主や債権者は開示資料をもとに投資を意思決定。
【社会福祉法人】… 非営利法人として社会福祉事業目的を達成し法人を継続させることで地域の福祉ニーズにこたえることが目的。会計開示は事業目的の財源及び使途の透明性を開示することを目的。株主も投資家も存在しない。
一般事業会社 | 社会福祉法人 | |
営利 | 営利法人 | 非営利法人 |
目的 | 株主や債権者の利益を追求 | 地域の福祉ニーズにこたえること |
会計開示 | 利益やその利益の源泉を開示することを目的 | 事業目的の財源及び使途の透明性を開示することを目的 |
株主 | 株主や債権者は開示資料をもとに投資を意思決定 | 株主も投資家も存在しない |
このような成り立ちの違いから社会福祉法人では補助金制度が多くある他、税金面でも優遇措置が図られています。
社会福祉法人の税金面や補助金制度などの優遇について
社会福祉事業を営む場合、法人税も消費税も非課税ですし、固定資産税・都市計画税も社会福祉事業の用に供する固定資産には固定資産税等は課されません(地方税法348②、地方税法702の2②)。
一般事業会社ではよく出てくる印紙税についても継続的取引の基本となる契約書については不課税となっています。
だったら、税金計算する必要ないし、税理士いらないんじゃないの?
ここで冒頭にお話した、友人のセリフにつながるのです。
では、我々会計専門家として、特に税理士は社会福祉法人にとってどのようなニーズがあるのでしょうか。
社会福祉法人で税理士が必要な理由
法律にも必要性が記載されている
一般事業会社においては上述のように利害関係者への正しい会計開示を行うことで正しい納税額を算定することや、会計基準・税制を使った税務上のアドバイスが主な役割といえると思います。
しかし社会福祉法人においては上述のように各種納税義務がないことから税金計算にいくら詳しくともそのニーズはないように思われますが、そのようなことは決してありません。
社会福祉法第55条の2第5項には以下のように記載されています。
社会福祉法第55条の2第5項
社会福祉法人は、社会福祉充実計画の作成に当たっては、事業費及び社会福祉充実残額について、公認会計士、税理士その他財務に関する専門的な知識経験を有する者として厚生労働省令で定める者の意見を聴かなければならない
社会福祉法
細かい内容は省きますが、要は計算書類の作成、計算書類を作成するための日々の記帳から開示内容については会計の専門家の関与が必要になるということです。
実は…計算書類が煩雑
社会福祉法人の計算書類は開示内容が多く、そして細かく法令で規定されています。
それらに対応するためには、社会福祉法人固有の会計処理を理解し、アドバイスできることが必要となります。
また、前述の社会福祉充実計画の作成・算定については法人の経営や運営の状況についてその内容を理解し、正しく計算書類に反映させることが必要となります。
我々税理士は、社会福祉法人の経営者とコミュニケーションをとることで法人の組織運営に関する情報を入手し概況を理解して計算書類に反映させています。
また経理担当者とのコミュニケーションをとることで記帳業務へのアドバイスや規定への準拠を確認しています。
このように法人と税理士が協力していくことで適正な計算書類の開示が達成されると言えます。
では、社会福祉法人にはどんな税理士が良いか?
社会福祉法人を担当してきた専門家として、最低限これだけは知ってる人じゃないと経営者様が苦労するかも…というのがコチラです。
- 社会福祉法人の業務や業界について知見がある
- 社会福祉法人の税務経験がある
- 指導監査への対応ができる
- 話しやすい、コミュニケーションが取りやすい人柄
ここからは少し掘り下げます。
社会福祉法人の業務や業界について詳しい
保育園や介護、デイサービスなどの業務に知見があるかないか、では話しのスムーズさが違います。
帳簿などはもちろんですが、業務内容に詳しい、業界の動きに対して詳しいと、関連する法改正や規制緩和などについても知っていたりします。
これらは直接、税務や経理とは関係なくても、その対応の為にお金を使うことがありますからキャッシュフローにも関係が出ます。
社会福祉法人に元々詳しい人に頼むと、説明なども省けることも多くなります。
社会福祉法人の税務・会計の経験がある
社会福祉法人は法人税法上、「公益法人等」に含まれます。
社会福祉法人会計基準という厚生労働省令と一般に公正妥当と認められる社会福祉法人会計の慣行からなります。
一般企業同様、複式簿記であるのは当然ですが、
社会福祉法人には補助金や税金の非課税・不課税などの優遇があるため、より一層お金の動きが明確な帳簿になります。
例えば、国庫補助金等特別積立金などの経理処理。
その処理一つとっても、背景には社会福祉法人の目的を中心に、税法や補助金が絡んでいますから、お時間あるタイミングでご一読ください。
指導監査への対応ができる
社会福祉法人の税務に置いて、最大の特徴(?)が「指導監査」です。3年に1度あります。
弊社への社会福祉法人関連のお問い合わせや、既存客の社会福祉法人様からご紹介して頂いた社会福祉法人様も「指導監査への心配」を仰っていました。
指導監査とは、すべての社会福祉法人に行われる市等による監査を言います。
指導監査の項目はざっくり2つ【法人全般(運営・財務)】と【運営管理】です。
両方とも自主点検表があり、合わせて100ページほどあります。内容は法令等に基づいて実施していれば「いる」に○をつけ、行っていなければ「いない」に○をつけるというものです。指導監査はこの自主点検表の項目内容によってすすみます。
指導監査当日は、自主点検表をもとに、根拠となる資料をもとに、法令と定款に則った運営が行われているかを確認されます。
税理士の出番は、財務についてです。
税務調査を立ち会ってくれる税理士は多いけども、指導監査にも立ち会ってくれる税理士かどうかを確認しましょう。
社会福祉法人の経験がある税理士ならば、事前準備の段階で指導されやすいポイントを優先的に対応してくれます。
コミュニケーションが取りやすい
お互い人なので「この人とは話しやすいな」と感じる人にお願いするのがベストです。
もちろん、上記の条件は必要ですが・・・
一般的な企業よりも社会福祉法人はお客様と税理士の距離感が近いというか、
コミュニケーションを取るシーンが多い傾向があります。
聞きにくいこと、話しにくいこともあるかと思います。
そんなときに寄り添ってくれる人柄やメールや電話の折返しの有無やスピード感は安心にも繋がります。
でも、今から探すのに、コミュニケーションが取りやすい税理士かどうかはわかりにくいですよね。
ウェブサイトとかで探す場合はなおさらです。
その場合は、社会福祉法人から社会福祉法人の紹介があるか、紹介が多いか、を見てみると良いでしょう。
紹介が多いというのは、満足度が高い証拠であり、上記4つともクリアしている可能性がとても高いです。
社会福祉法人の税理士は必要か?選び方のコツのまとめ
今は「社会福祉法人 税理士」などで検索をすれば、「社会福祉法人に強い税理士」というのはいっぱい出てきます。
その中から一つを選ぶ…というのはとても大変かと思いますが、ぜひ参考にしてみてください。
皆様の経営がより一層、いいものに・・・
そして、より一層、よい福祉が世の中に届けられるように・・・
税理士法人YFPクレアの社会福祉法人チーム一同、願っております。
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