LLP 有限責任事業組合とは?
LLP(Limited Liability Partnership)は、有限責任事業組合の略です。
イギリスで発祥したこの事業体は、アメリカや他の国を経て、日本にも2005年から設定されました。
LLP 有限責任事業組合は誰かと営利事業を始めたいときや、企業間の合併を検討しているときなどに用いられています。
株式会社とは異なり、資本金を出した金額に応じて報酬が変わるのではなく、「人」によって利益分配を変えられる事業体です。
組合員の同意により、利益分配を変えたり、自由にルールを決めることが出来ます。
LLP 有限責任事業組合の税務・会計の特徴
法人税が課されない!パススルー課税
株式会社や合同会社ならば、利益に対して法人税を課し、残った利益に対して出資者に配分され、その配当にも課税されますが、LLPは異なります。
売上も経費も構成員で原則、出資割合に応じて配分し、構成員が各々確定申告をすることになります。
構成員は確定申告が必要!出資者の他の所得と損益通算が可能に。
前項とは逆に、LLP 有限責任事業組合の事業で損失が出た場合、
出資者の他の所得と損益通算をすることが出来ます。
株式会社などとは異なり、LLP 有限責任事業組合からの配当は「配当所得」ではなく「事業所得」です。
法人税の申告は不要ですが、個人事業主のように、毎年3月15日までに確定申告を行う必要があります。
その際、他の会社からの給与所得、不動産所得等がある場合は一緒に申告しましょう。
また、確定申告を行うので、ふるさと納税はワンストップ特例は使えなくなります。
事業所得ですので、売上<経費 の場合、損益通算が可能になります。
他で給与等の収入がある場合、調整出資金額までしか損失として計上することができないので注意が必要です。
構成員は青色申告の65万円控除も受けられる
LLPの構成員は個人事業主の扱いになるので、構成員一人ひとりが青色申告の65万円控除をうける対象になります。
決算はある。税務署に提出する書類もある
LLP 有限責任事業組合には法人税申告はありませんが、決算書(貸借対照表、損益計算書、附属明細書)を作り10年間保管する義務があります。
LLPには公告は必要ありませんが、組合契約書が定めた計算期間が終了した翌年の1月31日までに「組合員所得に関する計算書」と、その「合計表」を税務署に提出します。
決算書は、売上や経費等を分配するのにも使用しますが、
組合員の誰から出資を受けて、いくら分配したかを報告することも必要ですから、株式会社等と同様に決算業務は行う必要があります。
ただし、税務申告はありません。
消費税も同様に分配されるので、もしかしたら節税チャンス有り?
分配されるのは売上や経費だけではありません。消費税も分配されます。
消費税は、課税売上が1,000万円以上だと課税事業者になりますが、LLP 有限責任事業組合には課税されず、構成員に課税されます。
LLPの場合、構成員の課税売上が1,000万円以下の場合は免税になります。
LLP自体の課税売上が1,000万円を超えたとしても、分配後の構成員の課税売上高が1,000万円未満ならば、納税義務はありません。
LLPの税務会計 よくある質問
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「有限責任」とは?「有限責任」ってなんですか?
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1.有限責任とは、出資者(LLPの場合、組合員)が、出資額の範囲までしか事業上の責任を負わないこととする制度です。
2.有限責任により、出資者にかかる事業上のリスクが限定され、事業に取り組みやすくなります。
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内部自治が徹底するとはどういうことですか?
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1.内部自治とは組織の内部ルールが、法律によって詳細に定められるのではなく、
出資者(組合員)同士の合意により決定できることで、2つの意味があります。第一に出資比率によらず、損益や権限の柔軟な分配ができるということ
第二に、取締役などの会社機関が強制されず内部組織が柔軟である、ということです。①柔軟な損益や権限の分配・出資者の間の損益や権限の分配は、出資者の労務や知的財産、ノウハウの提供などを反映して、
出資比率と異なる分配を行うことができる。②内部組織の柔軟性LLPのガバナンスは、出資者の間で柔軟に決めることができる(取締役会や監査役など会社機関の設置は強制しない)。
(参考)
○ 株式会社においては、原則として出資比率に応じた損益の分配や議決権の分配が強制される(株主平等原則)。
○ 株式会社においては、株主が経営者を監視する取締役や監査役の設置が強制される。2.内部自治によって、共同事業を行うに際して重要な出資者(組合員)の動機付け(インセンティブ)を高めることが容易となり、
事業上のニーズに応じた柔軟な組織運営が可能となります。注意が必要です!
実際に出資比率と異なる分配を行う場合には、
各組合員の出資の価格を基礎とした割合を用いて得た利益と損失の額(出資割損益額)に、
各組合員間で取り決めた分配割合に応じた利益・損失の額と、
当該出資割損益額との差額に相当する金額を加算または減算して調整する方法によるほか、合理的な計算方法で行う必要があります。また、損益分配割合は私法上の特約契約の一種であって、税務上それに基づいて分配が行われた場合でもすべてが認められるわけではありません。
出資比率と異なる場合には、各組合員の出資の状況、組合事業への寄与の状況等から見て、経済的合理性があるものでなければなりません。
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構成員課税とは?
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1.構成員課税とは、組織段階では課税せず、出資者に直接課税する仕組みです。
2.構成員課税の効果としては、LLPの事業で利益が出たときには、LLP段階で法人課税は課されず、出資者への利益分配に直接課税されることとなります。
3.また、LLPの事業で損失が出たときには、出資の価額を基礎として定められる一定額の範囲内で、出資者の他の所得と損益通算することができます。
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LLPの設立を検討しています。どうしたら良いですか?
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税理士法人YFPクレアでは、LLPの設立も対応しております。
詳しくは下記から御覧ください!
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LLPの業務執行に関する意思決定はどのように行うのでしょうか?組合員の全員一致しないとだめですか?
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1.LLPは取締役会や社員総会などの機関を置く必要がありません。
LLPの業務執行に関する意思決定は、原則として総組合員の全員一致で行うこととなります。2.上記の意思決定に関して、LLP契約において意思決定の方法を全員一致以外の方法で定めることも可能ですが、
①重要な財産の処分及び譲受け、
②多額の借財については、
全員一致又は組合員の3分の2以上の同意で決定することが必要です。LLPでは、組合契約に基づき、組合員全員がそれぞれの個性や能力を活かしつつ、
共通の目的に向かって主体的に組合事業に参画するという制度のニーズに基づいて導入した制度です。このため、LLP業務の中核的要素をなす業務の執行については、原則として総組合員の同意で決定していただくことが妥当です。
また、この業務執行の決定に関する規定は、組合事業の健全性を高め、債権者の保護に資すると考えられます。
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出資だけは可能ですか?LLPの業務執行はどのように行うのでしょうか?
出資だけの組合員は排除されます。
1.業務執行の内容は、例えば、対外的な契約締結などのLLPの営業に関する行為や、その契約締結のための交渉、あるいは、具体的な研究開発計画の策定・設計、帳簿の記入、商品の管理、使用人の指揮・監督等、組合の事業の運営上重要な部分が含まれます。
2.業務執行に関しては、マーケティング担当、財務担当など、分担をすることは可能ですが、業務執行の全部を他の組合員に委任することはできません。
LLPは組合員全員がそれぞれの個性や能力を活かしつつ、共通の目的に向かって主体的に組合事業に参画する…という制度です。そのため、組合員全員の業務執行への参加を義務付ける規定を導入することとしています。
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柔軟な権限分配はどのように行うのでしょうか?
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一般的な株式会社では縦社会になっていて、
社長や役員などの重役が責任が重い分、高い給料をもらっている構造になっているので、権限が分配されていたり、損益が柔軟に分配と言われてもピンとこない方も多いかと思います。- LLPにおいては、重要な意思決定の全員一致、業務執行への全員参加が、組織の前提となる共同事業要件として強制されますが、この要件を満たす範囲で、各組合員の業務分担や権限は柔軟に決定できます。
- この業務分担や権限については、組合員全員が合意の上、LLP契約に書き込むことも可能ですし、契約の詳細事項を決める組合員間の規約などで規定することも可能です。
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柔軟な損益分配はどのように行うのでしょうか?
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LLP法では損益分配については下記のように定められています。
- 民法組合では、出資比率と異なる損益分配が可能であり、民法組合の特例制度であるLLPにおいても、同様に柔軟な損益分配が可能です。
(損益分配の取り決めをしない場合は、出資比率にしたがって損益を分配します。) - 柔軟な損益分配の取り決めは、
①総組合員の同意により、
②書面で分配の割合の定めを行い、
③その書面に当該分配割合を定めた理由について記載することとしており、
その書面を適切に保存する必要があります。
税務上では、合意だけではなく、合理性も求められます。
出資比率と異なる分配を行う場合には、
各組合員の出資の価格を基礎とした割合を用いて得た利益と損失の額(出資割損益額)に、
各組合員間で取り決めた分配割合に応じた利益・損失の額と、
当該出資割損益額との差額に相当する金額を加算または減算して調整する方法によるほか、合理的な計算方法で行う必要があります。また、損益分配割合は私法上の特約契約の一種であって、税務上それに基づいて分配が行われた場合でもすべてが認められるわけではありません。
出資比率と異なる場合には、各組合員の出資の状況、組合事業への寄与の状況等から見て、経済的合理性があるものでなければなりません。
- 民法組合では、出資比率と異なる損益分配が可能であり、民法組合の特例制度であるLLPにおいても、同様に柔軟な損益分配が可能です。
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LLPは株式会社などの会社形態に組織変更はできますか?
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出来ません。会社組織にする場合は、一度解散をしてから株式会社を新たに設立することになります。
税理士法人YFPクレアのLLP 有限責任事業組合の税務サポート内容
LLPの決算はお任せ下さい!
組合員に分配するためにも、税務署に報告するためにも、決算業務は必要です。
内部で経理や決算業務を行うことももちろん可能ではありますが、組合員の中に経理や税務に詳しい人がいない場合は
税理士に依頼するのも方法の一つです!
LLPのメリットである組合員の強みを生かして本業に専念して頂き、売上を伸ばしていただければと思います。
組合員(構成員)の確定申告までサポートOK!
LLPで分配した利益は、各構成員がそれぞれ確定申告をすることとなります。
私たちがサポートします
LLPは設立数も少なく、株式会社等と比較すると経験は少ないのは否めませんが、
その分、しっかりと勉強をしてサポート致します。
LLP(有限責任事業組合)のための税務会計コラム!
LLPって何?どういう場合に使うの?
※この記事は2023年8月に書かれたものです。
皆さんこんにちは。税理士の柳川です。
今回から、LLP(有限責任事業組合)について解説するコラムを掲載します。
ぜひご覧ください。
LLPって何?どういう場合に使うの?
皆さんは仲の良い友人と一緒に事業をやりたい、でも、規模がまだ大きくないから会社を作るほどではないなぁという場合、どうしますか?
事業をやるからには、収益(売上など)や費用を集計して利益or損失を計算しなければなりません。場合によっては納税も必要になってきます。
会社を作る場合でしたら、法人として収益や費用を集計して申告し、法人税を払います。
しかし、法人を作らないのなら、事業に関わる人がそれぞれ個人として確定申告をしなければなりません。
では、複数人で運営する共同事業の場合、収益・費用、そして利益をどうやって分けるか、税金をどう負担するか問題になってきます。
青色申告するなら帳簿をちゃんとつけなくてはいけません。同じものを買っても売っても1人1人それぞれ帳簿をつけるのはなんだか面倒ですね。
そのような場合に有効なのがLLPです。
日本語では有限責任事業組合といいます。
簡単に言いますと、構成員全員分の収益と費用を合算して帳簿を作り、確定申告の時に、出資割合(その他の割合でも可)でそれぞれ配分します。
例えば、売上合計が900万円、出資割合が[4:3:2]の場合、400万、300万、200万で配分するのです。
費用も同様の方法で配分することになります。
簡単で透明性が高くなりますね。
2回目以降のコラムでは、実際にどうやって運営していくのかを解説したいと思います。
LLP 有限責任事業組合の税務サポート費用
LLPの税務・会計サポート
売上高 | 年間 面談回数 |
費用(税別) | |||
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顧問料 | 記帳代行 | 決算 | 年間合計 | ||
3,000万円以下 | 2回 | 15,000円 | 10,000円 | 99,000円 | 399,000円 |
5,000万円以下 | 2回 | 15,000円 | 10,000円 | 139,000円 | 439,000円 |
1億円以下 | 2回 | 15,000円 | 10,000円 | 264,000円 | 564,000円 |
※ご面談をさせて頂く際は来所もしくはZOOMになります。
※上記料金には「税務調査の立会」「税務署等への届出」のサービスが含まれます。
その他の料金
- 組合員所得の計算書 30,000円/人
- 組合員の所得税申告 別途お見積りいたします。ご相談ください。
- 年末調整 2,000円/人
- 法定調書 10,000円/回
- 償却資産 15,000円/回
給与計算関連
- 給与計算 1,500円/人
- タイムカード集計 600円/人
- 賞与計算 1,500円/人
- 給与計算ソフト クラウドシステム利用料 1,500円/月
社会保険関連
スタッフの入退社に伴う業務
- 雇用保険 3,000円/人
- 社会保険 3,000円/人
- 離職票 5,000円/人
※対象者が5名以上の場合はシステム料として1,500円/月を頂戴します。
5名以下の場合は別途送料1,000円を頂戴しております。
入退社に関わらず発生する業務
- 労働保険年度更新 10人まで 18,000円 超過1人ごとに500円
- 社会保険算定基礎届 10人まで 18,000円 超過1人ごとに500円
組合員・構成員の確定申告をワンストップで
90,000円~ + 記帳の件数に応じて
内容 | 標準サービス | 税抜金額(年) |
---|---|---|
基本料金 | 給与・年金・一時のみ | 15,000円 |
加算報酬(青色申告) | 収入500万円まで(仕訳数100件まで) | 75,000円 |
収入1,000万円まで(仕訳数200件まで) | 95,000円 | |
収入2,000万円まで(仕訳数600件まで) | 135,000円 | |
収入2,000万円超 | 個別にご相談 |
追加料金(税込) | ||
---|---|---|
医療費控除(集計確認) | 5,500円(50枚まで) | |
ふるさと納税 | 3,300円(20枚まで) | |
住宅ローン控除 | 11,000円(初年度のみ) | |
雑損控除 | 5,500円 | |
消費税申告 | 簡易:30,000円~ 本則:90,000円~ |
|
決算書・申告書の再発行・追加発行 | 2,200円/冊 | |
紙の決算書・申告書の発行(データは無料) | 2,200~3,300円 | |
財産債務調書 | 50,000円~ | |
国外財産調書 | 50,000円~ |