こんにちは。浦和7課所属の村上洋介と申します。
甲子園は慶応高校の優勝で幕を下ろしましたが、高校野球は今年もたくさんの話題を提供してくれました。
ぼくは、小学生のころからずっと甲子園を見続けている高校野球ファン。
そこで、我が家に起こった一つのエピソードをご紹介いたします。
昭和57年8月8日、日曜日。
この日の第一試合は、私の故郷・青森県代表の木造(きづくり)高校VS佐賀商業。
小学4年生の私は、両親と4歳の弟と、家族4人でテレビの前にいました。
「青森の子供たちが、全国ネットでテレビに映る」
都会育ちの人たちにはピンと来ない感覚かもしれませんが、田舎の人々にとっては重大なイベント。
大人にとっては、この日の木造の選手たちは「県民のこども」
子どもにとっては「青森のお兄ちゃん」
みんなドキドキしながら応援していたものです。
試合が始まると、序盤から佐賀商業のワンサイドゲーム。
それだけで済めばいいものの、なんと木造高校は一人のランナーも出せない…。
佐賀商業の新谷投手がおもしろいようにアウトの山を築いていきます。
高校野球ファンならご存じかと思いますが、一人の走者も出さない「完全試合」は、春の甲子園では達成されているものの、夏ではいまだに達成されていないのです。
実況も完全試合を期待し始めます。
「佐賀商業の新谷投手、まだランナーを許しておりません。」
いよいよ本題です。
試合中盤あたりから、両親(特に父)にフラストレーションがたまり、選手への応援が、罵声へと変わり始めました。
「全然、まいね(ダメ)な。」
「めぐせ(はずかしい)じゃ。」
「まんだ(また)三振がぁ。」
など、想像以上の惨状に我が家はもう「応援団」ではなくなっていきました。
その様子を見ていた僕も両親に便乗し、
「そった(そんな)球、振るなよ!」
「走れ!」
「なにやっちゅんずや(なにやってんだよ)」
となどと言いたい放題。
そしてついに、
「さぁ、新谷投手、あと一人で完全試合達成です!」
(最悪だ。よりによって日曜日にこんなことになるなんて。青森がバカにされる…。)
という青森県民にとって地獄のような場面を迎えたその時、
「ああっ!デッドボール!」
という実況とともに、マウンド上の新谷投手は大きくのけ反って天を仰ぎ、木造高校は完全試合を免れました。
次のバッターがアウトとなり、ノーヒットノーランが達成されました。
「ノーヒットノーランで助かった。」なんて聞いたことありません。
試合後も、我が家には労いの言葉は一切ありませんでした。
その日の夕方だったでしょうか。事件です。
テレビから
「佐賀商業との試合に敗れた木造高校ナイン。甲子園の売店でお土産を買っている様子です。」
というキャスターの声が聞こえ、買い物をしている木造高校の生徒が映っていました。
僕は、ここぞとばかりに、両親の顔をチラチラ見ながら、
「そったお土産だなんで買わねくていいぞ!弱ぇくせに!」
「帰ってくるな!」
(言ってやって。言ってやって。)と思いながらニヤニヤ両親を見ていると、
父「洋介。そった(そんな)こと言えばまいね(だめ)。一生懸命やったんだがら。」
母まで「んだよ。そったこと言ったらかわいそうだべさぁ。」
なんと、いわゆる「手のひら返し」。
「はぁ?よくもまぁ、何事もなかったようにしゃあしゃあとそんなことが言えるなぁ!」
「おいおいおい。言い始めたのは誰だよ。あの時は3人(わけがわからない弟は除く)が『共犯』だったよなぁ!」
「突然オレ一人悪者かよ!はいはいはい、そうですよ。俺だけが超冷酷人間ですよ!悪かったなぁ!」
「ビデオ録っておけばよかった。チキショー!(ハンディカメラもないくせに)」
あの時の怒りと悔しさは忘れることはありません。
この時、よくわかったことは、「子は親のマネをする」ということです。
一時の感情に任せて発してしまった言葉だったとしても、子供にそんな事情はわかりません。
先日、帰省した時に、この話を両親にしてみたところ、母親は大爆笑。
父は「そんなことあったかなぁ」ととぼけておりましたが、終始苦笑い。
今ではそんな素敵な夏の日の思い出をプレゼントしてくれた木造高校と佐賀商業に感謝です。
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