「税務調査」と聞くと、多くの経営者様は「怖い!」と感じられるのではないでしょうか?映画「マルサの女」や、2時間ドラマ「税務調査官 窓際太郎の事件簿」をイメージしている方も少なくないかと思います。

知らないうちにゴミ箱を漁られて証拠をとられていたり、突然黒いスーツの怖い人たちがいっぱいやってきて「動くな!」と静止させられ、段ボールに資料を詰めて持って帰る、ということは実際にはほぼありません。
このような税務調査は、巨額で悪質な脱税行為を摘発するために捜査令状をもってやってきます。

税務調査とは!?

税務調査とは、確定申告(法人税、所得税、相続税など)が正しく申告されているかどうかを税務署が調査することです。

以前は法人に税務調査が入ることが多かったのですが、個人事業主であっても税務調査が入ることが多くなってきました。
最近はサラリーマンの副業で株取引や不動産所得、YouTube、オークションなどから収入を得られている人が多くなったことで、サラリーマンの副業に関する税務調査も増えています。

税務調査には2種類あり、実地調査と簡易な接触があります。
簡易な接触とは、税務署等から電話や手紙で来署依頼をされて、納税者が資料等を持参して税務署へ訪問。
納税者に対して、自発的に申告内容の見直しを要請するものです。

令和4年度の税務調査は法人税だけでも、実地調査件数が6万2000件、簡易な接触が6万6000件ありました。追徴税額は実地調査で3,225億円、簡易な接触で71億円に達しています。
実地調査二関しては、調査1件あたり追徴税額が524万円が平均となっています。
参照:令 和 4 事 務 年 度 法 人 税 等 の 調 査 事 績 の 概 要

税務調査の立会

税務調査が入る時期と日数

税務調査が入る時期は、3月の確定申告と最も法人税申告が多い5月が終わって落ち着き、異動も終わった7月頃からスタートして8月から11月頃までが最も多い傾向にあります。

多くが、月曜日・火曜日に調査に入って、色々持ち帰って、水曜日はお休み。木曜日か金曜日に、再度調査官が来て、言い渡される…という流れになります。

税務調査の対象期間(年数)

税務調査の対象となる期間(年数)は基本は5年間ですが3年間のケースもあれば、脱税など悪質だと税務署が判断した場合は最大7年間が対象期間です。

調査では会計帳簿や領収書など過去の書類の提示を求められます。領収書や請求書は5年間、会計帳簿は7年間の保管義務がありますのでご注意ください。
「5年も前のことなんて覚えてないよ!」と言っても税務署には通用しません。少なくても3年~5年はさかのぼって調査されます。
今の領収書や請求書が5年後調査に入られたときにきちんと説明できるように裏書するなど準備しておくことが重要ですね。

税務調査の対象期間

税務調査が入りやすい法人・個人の特徴

税務署は申告書を見て税務調査に入るかどうかを決めています。
無申告であることも少なくなく、調査の対象になることは多いです。税務調査の対象となるのは全ての個人・法人ではありますが、ランダムに選ばれているわけではありません。
税務調査官も仕事ですので、指摘をたくさんした方が出世に繋がるため、選んでやってきます。

  • 法人成りして3年程の会社
  • 黒字の会社
  • 売上や利益が急激に増えている(もしくは減っている)会社
  • 以前の調査で追徴課税を受けた会社
  • 消費税の還付を受けた会社
  • 脱税が多い業界の会社
  • 内部告発があった会社
  • 非経常的な経費が多い会社

このような会社は個人・法人問わず、税務調査が多い傾向があります。
よくある質問で「いくらくらいから入りますか?」と聞かれますが、会社の規模としては年商1000万円程度からが行われています。

税務調査に入りやすい業種には偏りがある?

税務調査に入りやすい業種はありますか?

これもよく聞かれる質問です。国税庁は法人税の申告で不正が発見された件数が多い業種を公開しているのでまずは御覧ください。

令和3年の不正が多かった業種

順位業種目不正発見割合
1その他の道路貨物運送32.8%
2医療保健31.2%
3職別土木建築工事29.6%
4土木工事28.7%
5その他の飲食28.4%
6化粧品小売28.0%
6美容28.0%
8機械修理27.9%
9一般土木建築工事27.3%
10貨物自動車運送27.3%
参考:令 和 3 事 務 年 度 法 人 税 等 の 調 査 事 績 の 概 要

令和4年の不正が多かった業種

順位業種目不正発見割合
1その他の飲食36.2%
2廃棄物処理29.4%
3中古品小売28.7%
4土木工事27.7%
5職別土木建築工事27.6%
6医療保険27.6%
7一般土木建築工事26.8%
8管工事26.4%
9自動車、自転車小売25.1%
10美容25.0%
参考:令 和 4 事 務 年 度 法 人 税 等 の 調 査 事 績 の 概 要

過去2年分を比較すると、医療保険やその他の飲食など、太字にしたものは2年間にわたって不正発見が多い業種です。
こういう業種は税務調査が頻繁に入ると思って準備しておいたほうがいいでしょう。

しかし、令和3年は貨物運送系が1位と10位に入っているのにも関わらず、令和4年ではランクインしていません。
代わりに廃棄物処理や中古品小売業などが含まれています。

このようにある程度は入りやすい業種はあるものの、他の業種もバッチリ入ります。
入りやすい業種に属している人はこころしておきましょう!

税務調査が入る頻度

税務調査が入る頻度は会社によっても大きく異なります。よく5年に1度ペースで来ると言いますが、実際はそうではありません。

脱税した会社や不正に加担している可能性がある会社などは3年に1度調査が入ります。

税務調査で見られるポイント

税務調査ではよく見られるポイントがあります。

  • 売上の操作がないか(売上計上の時期の操作、金額の操作、計上漏れ)
  • 交際費は適切か(個人的なものは含まれていないか)
  • 在庫の計上漏れ
  • 架空の人物に対する人件費の支払がないか
  • 外注費

簡単に言うと、「売上を少なく見せたり、経費を多くしていないか(利益を減らそうとしてないか)」「プライベートな費用を会社の経費で落としていないか」という2点をよく見られます。

また、限られた時間の中で1~3期分など長い時間の帳簿を確認するために、怪しそうだな…というところは予め決算書でチェックされた上で調査にきます。

売上の操作がないか(売上計上の時期の操作、金額の操作、計上漏れ)

「本当は今期に売り上げたけど、来期にした」というのはNG

この間違いを指摘されることが多数あります。
会計基準として、売上の計上は、モノ(商品やサービス)を提供した日付で計上しなければなりません。(これを発生主義といいます)
実際にお金を振り込まれた日付や、請求書を送った日付にすることは出来ません。

税務調査では証拠を押さえるために、預金通帳や納品書、請求書はもちろん、メール等のやり取りなど書類の照合を行います。
ウッカリミスではなく、故意に利益を減らそうとした場合、重加算税の対象にもなります。

故意に売上を少なくしたのもNG

また、故意に売上を少なくした…というのもNG。
売上を隠すために社長個人の預金通帳を使われることもあるので、そこのチェックも含めて調査されます。

交際費は適切か(個人的なものは含まれていないか)

  • 接待ということにしたプライベートの飲食代
  • 贈答用ということにした自分用のもの
  • 取引先といったことにした家族旅行

個人的なものを会社の費用として計上していた場合、経費としては認められません。
さらに、役員賞与の源泉所得税徴収漏れとして2重で税金を加算され、さらに悪質と判断されれば40%加算のされます。

社長は軽い気持ちで経費に入れているかもしれませんが、非常にリスクが高い行為です。

在庫の計上漏れ

「今期は利益が出ちゃったから、仕入をいっぱいして利益を減らそう」という行為は極めてNGです。
在庫表をちょっと操作すれば簡単に操作ができてしまうので、社長はバレないと思いきや、税務署にとってはお見通し。
売上と仕入と在庫の流れを見ればばれてしまいます。

架空の人物への人件費

架空の人物へ人件費を払ったことにして、利益を減らすのも当然NG。
働いていないのに身内を入れていたりしてもタイムカードや源泉徴収簿、履歴書などがチェックされます。

外注費

税務調査が入る!その前にデキルさ対策は税理士にご相談を

本来、給与にしなければならない人件費を外注費とすることによって、消費税の納税額が減るのです。
それも税務署は許しません。

外注費にするためには、
相手が他からも同様に外注を受けていることだったり、物品や通勤費の支給がないことや、請求書が存在すること等があります。
税務調査の際は、契約書や請求書をガッツリ見られます。

税務調査に当たらないようにするには?

ここまで読んで「税務調査、来ないでほしい!!」と思う経営者もいるかと思います。では、税務調査を来ないようにするためにはどうしたらいいのか!?

税務調査に当たらないようにする方法

  • 税金の申告、納税を期限内に適切に行うこと
  • 税務調査の割合が低い税理士を選び、アドバイスを聞くこと

ここからは、それぞれの解説します。

税金の申告、納税を期限内に適切を行うこと

申告が頻繁に遅れる、納税が遅れる…という会社はだらしない会社、納税意識が低い会社と見なされてしまいます。

無申告は税務調査を呼んでいるようなもの。税務署は当然把握しています。
5年ほど放置して税務調査5年分ドーン!と行うなどもあります。無申告加算税、追徴課税、延滞税などを取られて余計に税金を払うことになります。

また「社員だけど業務委託にしちゃえ!」みたいなことをするのもアウト。
業務委託なら業務委託できっちりと棲み分けをして、区別する必要があります。

申告は正しく出来ても、納税が出来ない!というケースもあるかと思います。
特に、その年は赤字で法人税は均等割だけだったけど、消費税の納税をしなきゃいけないのにお金がない!!というケースも…
そんなときは早めに分割納付の相談をしてみましょう。
渡る税務署はオニばかり…ではないです。

税務調査の割合が低い税理士を選び、アドバイスを聞くこと!

税理士をつけてれば税務調査に入らない…ということはございません!
税理士をつけたほうが、正しい申告が出来るので、税務調査に当たる確率は減ります。
更に、税務署から信用度の高い税理士事務所だと更に割合が下がります。

しかし、そんな税理士事務所であっても、アドバイスを聞かないお客様は一定数いらっしゃるのは事実です。
そういう会社は、税務調査に入った際は予想した箇所を指摘され、延滞税などを支払っています。

税理士をつけるだけではなく、きちんとアドバイスを聞いてほしい…税理士からのお願いでした。

まとめ

頭抱える前に、対策を一緒に打ちましょう

税理士法人YFPクレアの税務調査立会サポート

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