この記事は2022年6月に書かれたものです。

みなさまこんにちは。税理士法人YFPクレアの中村です。
今回は通常生活でも関わっている消費税について事業者としての側面でお話をしたいと思います。

消費税の基礎知識

消費税の税率

近年5%から8%そして8%から10%へと消費税率が改正により引き上げられてきていることは多くの方がご存じかと思われます。

ただ、この消費税の税率10%(又は軽減税率8%)というのが実は国の税金である国税と地方自治体の税金である地方税との合計であるということはあまり知られていないかもしれません。

具体的な数値で表すと、

 10% =7.8%  (国税)+2.2%  (地方税)
 軽8%=6.24%(国税)+1.76%(地方税)

上記のような割合で分かれていることになります。
ただしこれらは消費税の申告書の計算時以外では基本的に区分する必要はございませんので、あまり意識せずともよろしいと存じます。

消費税の納税義務者

さて、今度は納税義務者についてご説明いたします。

まず消費税の負担者は誰なのかというところからお話しますと、これは最終的な消費者ということになりますので、日本国内にいる全ての人が基本的には対象となります。

例えば100円の商品を購入した場合には、商品の対価100円に加えて消費税10円を加算した金額を販売店へ支払うこととなります。
そして販売店の立場からみると商品の対価100円を受け取ると共に消費者が負担する消費税10円について預かることとなります。
この預かった消費税10円を国に納付する義務を負うのがこの販売店、すなわち我々事業者ということになります。

 消費税の負担者   = 消費者
 消費税の納税義務者 = 事業者

この様に、税の負担者と納税者が異なるという性質を持つ消費税のような税のことを「間接税」と言います。
これに対し所得税、法人税などの負担者=納税義務者となる税については「直接税」といいます。

消費税の納税義務の免除

3で説明したように、事業者は消費税を負担する消費者から消費税を預かり、これを国へ納付する義務を負う ということになります。
この時、その納税義務が発生している事業者のことを「課税事業者」と言います。

これに対し一定の小規模な事業者については、この納税義務について免除されることとなり、これを「免税事業者」と言います。
この免税事業者の対象となる事業者について個人事業主を前提にご説明すると、「2年前の課税売上高(消費税の計算対象となる売上等)が1,000万円以下(※)である要件に該当する事業者」が対象となります。

「開業して2年間は消費税を納めなくてもよい」という話を聞かれたことがあるかもしれませんが、これは「2年前についてはそもそも開業前のため売上がない」ということから、要件に該当するものと言うことができます。
ただし、一定の相続や課税事業者の選択等、例外的に初年度から課税事業者となる場合もございます。

※2年前が「課税事業者」であれば税抜の金額
 2年前が「免税事業者」であれば税込の金額

基礎知識まとめ

〇消費税の税率(2021年11月時点)
 10% =7.8%  (国税)+2.2%  (地方税)
 軽8%=6.24%(国税)+1.76%(地方税)

〇消費税の納税義務者
 消費税の納税義務者 = 事業者
 消費税の負担者である消費者から消費税を預かり、国へ納付する
 消費税は間接税である

〇消費税の納税義務の免除
 2年前の課税売上高が1,000万円以下であれば、例外を除き納税義務が免除
 ⇒免税事業者

消費税の対象となる取引

さて、続いては消費税の対象となる取引についてお話させていただきます。

消費税の対象となる取引とは、下記の4要件を全て満たす取引をいいます。

  • 国内において行う
  • 事業者が事業として行う
  • 対価を得て行う
  • 資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供

では、一つずつ解説していきます。

要件①【国内において行う】

これは日本国内において消費等されるものについて消費税を課税するという性質から、日本国外での取引であった場合には課税しないということになります。

日本国内の出版社から受け取る印税等の先生方の売上についてはもちろん国内取引に該当します。

要件②【事業者が事業として行う】

先生方は個人事業主又は法人として「事業者」に該当することとなります。
次に、法人が行う活動については全て「事業として」に該当し、個人事業主であれば【対価を得て行う】取引を反復継続し、かつ独立して行うものについては「事業として」に該当することとなります。
個人が事業とは関係のないような生活動産、趣味で集めているようなものを売却したというような場合には事業者が事業として行う取引に該当しないため消費税の課税の対象とはなりません。

要件③【対価を得て行う】

「対価を得て行う」とは、反対給付としての対価を受け取る取引のことをいいます。

印税や原稿料などについては先生方の著作物を出版社が使用することに対して使用料として反対給付を金銭で受け取っていることになり「対価を得て行う」取引に該当することとなります。
この「対価を得て行う」取引に該当しない例として寄付金がございます。
寄付により金銭等の支出があった場合において、その寄付を受け取った者からは何ら対価を受け取ることはありませんので「対価を得て行う」取引には該当せずに消費税は課税されないこととなります。

要件④【資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供】

資産の譲渡及び貸付(以下「資産の譲渡等」)とはその名の通り、ある資産を譲渡(販売等)したり貸付を行う取引を言います。

製本された書籍を直接販売する行為やレンタルする行為などが該当します。
役務の提供とは一般にサービスの提供をいい、印税や原稿料などの著作物の利用に関するものはこちらに該当することとなります。

ただし、著作権そのものを譲渡するといった場合には「資産の譲渡等」に該当することとなります。

さて、具体例を交えながら消費税の課税取引となる4要件を解説してきましたが、先生方の売上については基本的に上記4要件全て該当することになりますので消費税の課税対象の取引ということになります。
※電子書籍を海外でダウンロード販売するなど国内取引に該当しない例もあります。
 詳しくは「電気通信利用役務の提供」に係る内外判定基準をお調べいただくか、YFPクレアにご相談ください。

消費税の非課税取引について

消費税の非課税取引とは

消費税の課税対象となる取引についての下記の4要件についてお話ししました。

  • 国内において行う
  • 事業者が事業として行う
  • 対価を得て行う
  • 資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供

しかしながら上記4要件を満たすような取引であっても「消費」に対して課税するという税の性格から課税の対象としてなじまないもの、また社会政策的配慮から課税しないこととしている非課税取引が定められています。

主な非課税取引

主な非課税取引を、分かりやすく一覧にまとめました。
これがすべてとは言えませんが、おさえておくべき取引についてはまとまっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

主な非課税取引一覧

  • 土地の譲渡及び貸付け
  • 有価証券等の譲渡
  • 支払手段の譲渡
  • 日本郵便株式会社などがおこなう郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡
    および地方公共団体などが行う証紙の譲渡
  • 国等が行う一定の事務に係る役務の提供
  • 外国為替業務に係る役務の提供
  • 社会保険医療の給付等
  • 介護保険サービスの提供等
  • 社会福祉事業等によるサービスの提供等
  • 助産
  • 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
  • 一定の身体障碍者物品の譲渡や貸付け等
  • 学校教育
  • 教科用図書の譲渡
  • 住宅の貸付

漫画家のみなさまに関わりのありそうな非課税取引

この非課税取引のうち、特に漫画家のみなさまに関わりのありそうなものについて少し解説してみます。

漫画家のみなさまに関わりのありそうな非課税取引

  • 預貯金の利子および保険料を対価とする役務の影響等
    銀行等に預けている預貯金に対する利子や貸付金に係る利息は非課税となります。
    また保険料、保険料に類する共済掛金についても非課税となります。
  • 日本郵便株式会社などがおこなう郵便切手類の譲渡等
    実は郵便局で購入する切手については購入した時点では非課税となります。
    ただし購入した切手を使用して郵送等を行うと消費税の課税取引として認識されます。
    また、切手類が非課税となるのは郵便局などの本来の販売所のみであり、金券ショップで購入した場合には課税取引となるなど少しややこしい取引ですね。
  • 住宅の貸付
    これが一番身近に感じるかもしれません。通常物品等の貸付料などには消費税は課税されますが、住宅の貸付については非課税として規定されています。
    通常生活の様に供する住宅の貸付に限られますから、事務所や店舗としての貸付される場合には消費税は課税されます。

おわりに

今回は消費税の基礎知識から非課税となる取引までについてをお話をさせていただきました。
次回の消費税の計算について影響のある内容となっておりますので是非続けてご覧いただければ幸いです。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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