社会福祉法人会計において職員に対し退職金を支給することが定められている場合には、将来支給する退職金のうち当該会計年度の負担に属すべき金額を当該会計年度の費用に計上し、負債として認識すべき残高を退職給付引当金として計上します。
設立した直後から引当金の金額を見積もるのは難しいですが、共済制度に加入している法人であれば会計事務所や監査法人と相談をしたうえで計上するようにしてください。

社会福祉法人では法人独自に勤務年数に基づいて退職金を支給する法人は稀で、ほとんどの法人が外部の退職共済制度に加入をしており、共済会からの退職共済給付金を退職金として支給しています。
社会福祉法人が加入する退職金制度としては代表的なものは独立行政法人福祉医療機構(WAM)が実施する退職手当共済制度と都道府県等が実施している退職共済制度です。

以下にその両制度について処理方法を解説します。

WAMの退職共済制度の会計処理

拠出以後に追加的な負担が生じない外部拠出型の制度については、その制度に基づく要拠出額である掛金全額を費用処理します。

(借方) 退職給付費用  (貸方) 現金預金  ←貸借対照表、事業活動計算書
(借方) 退職給付支出  (貸方) 支払資金  ←資金収支計算書

また、退職時には退職共済給付金がWAMから退職者に給付されることで法人の退職処理が完了しますので、会計処理は不要となります

都道府県等が実施する退職共済制度の会計処理

都道府県等の退職共済制度は各都道府県により制度の内容が異なるため、実施者が会計処理の手引きを示している場合はそれに従いますが、下記のようになっています。

  • 原則………退職給付引当資産=掛金累計額
         退職給付引当金 =期末退職金要支給額
  • 簡便法1…退職給付引当資産=退職給付引当金=期末退職金要支給額
  • 簡便法2…退職給付引当資産=退職給付引当金=掛金累計額

なお、「期末退職金要支給額」とは、約定の給付額から被共済職員個人がすでに拠出した掛金累計額を差し引いた金額とします。

掛金支払時
 (借方)退職給付引当資産    (貸方) 預金   ←貸借対照表

職員預り金    
 (借方)退職給付引当資産支出  (貸方) 支払資金 ←資金収支計算書

退職時の処理は少々複雑になります。
なぜなら、退職給付引当資産には職員の退職共済掛金累計額が計上されていることから、職員が退職したときは、当該職員の掛金累計額を取り崩す必要があるのですが、この両者の間に差が生じることがあるためです。

退職共済は加入期間が長ければ掛金累計額よりも多くの退職共済金を受けられる一方、加入期間が短ければ累計額を下回ることになります。
この2パターンで会計処理が変わってくることとなります。

掛金累計額<退職金 の場合

職員が退職し退職金500を支払う場合でこの職員の退職給付引当資産残高が450、退職給付引当金は470のケース

  <借方>         <貸方>
退職給付引当金 470    預金       470 ←貸借対照表
退職給付費用   30    預金        30 ←貸借対照表、事業活動計算書
退職給付支出  500    支払資金     500 ←資金収支計算書
預金      450    退職給付引当資産 450 ←貸借対照表
支払資金    450    退職給付引当資産 450 ←資金収支計算書

               取崩収入

預金     50          その他の収益   50  ←貸借対照表
                          事業活動計算書
                          資金収支計算書(その他の収入)

掛金累計額>退職金 の場合

職員が退職し退職金100を支払う場合でこの職員の退職給付引当資産残高が180、退職給付引当金は90のケース

   <借方>         <貸方>
退職給付引当金  90    預金        90 ←貸借対照表
退職給付費用   10    預金        10 ←貸借対照表、事業活動計算書
退職給付支出  100    支払資金     100 ←資金収支計算書
預金      180    退職給付引当資産 180 ←貸借対照表
支払資金    180    退職給付引当資産 180 ←資金収支計算書

               取崩収入

その他の費用  80         預金        80  ←貸借対照表
                       事業活動計算書
                          資金収支計算書(その他の支出)

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2部3課 社会福祉法人チーム
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